随筆 8

今朝、ある人の夢を見た。

荒廃した都会、日本。そこをある人と歩いていた。

「奇跡は準備ができた者にだけ訪れる」

この言葉を私に送ってきた彼だった。

8年前。たった10日間だけど、フィジーで共に過ごした相手。

帰国したあと、何度となく会いたいと思ったが、結局あれから一度も会っていない。今は連絡先も知らない。

人づてに、私の本を読んでくれたときいた。

彼には読んでもらわなくては。だって、彼のメッセージをタイトルにしたのだから。

あの本は、単に事実を並べただけでなく、私の大切な人の想いが合わさって出来ている。だから、そういう想いが通じる人の手にしか渡らないと、実は当初から思っている。

読めない人は無料で贈られても読めないはずだ。

私の想いを相当量入れ込んで書き上げてあるし、息子二人の想いもあの本には強くこめられている。

息子が歩くことを想定してリハビリをしている頃、息子が歩いたらこの話を本にすると病室で話していた。

それが現実のものとなったとき「奇跡は準備ができた者にだけ訪れる」という言葉を英語で私に贈ってくれたのが、その彼だった。私はその時、それを本のタイトルにしようと決めた。

SNSは苦手だったが、知人の勧めでtwitterを始めたのもその頃。作家として名前を永く使う予定で、Mahiro Shuとしてアカウントをとった。2011年のことだ。

しばらくして消息がわからなくなった彼のことを心配して、彼の友人から私に連絡があった。何か知らないかと。

フィジーで彼が話していたことを思い出し、いろんな想いが交錯した。それを心に秘めたまま、彼は何かを探しているのだろうか……

それから数年が経ち、その彼の友人から、彼と会えたと連絡がきた。

私はまだ会えていない。会えていないと言えるのは、いつかきっとまた逢えると信じているから。

きっと、彼の心の準備ができたとき、連絡が来るだろう。会わなかった年月は、多分瞬時に埋まる。そしてきっと、同士のようにいつまでも話が尽きないだろう。

人の一生は不思議だ。

交わった時間の多少に関わらず、こうして忘れられない存在と、ある時ある瞬間に出逢えたりする。

いつかこの世界から消える時に、後悔なく旅立つとしたなら、そういう一つ一つの感謝をきちんと伝えてからの方がいい。

この世界で一息ついたとき、振り返るべき大切なことは、エネルギーの循環を滞らせることなく、きちんとやりきっておくことなのではないか。

同じような想いをもつ人々と繋がる世界に住み、この至福感で、出逢う生命を包んでいきたいと思うのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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