事実は小説より奇なり 6

※これは事実に基づいたフィクションかもしれません。

 

話は、彼と二人で京都のBARにいた時に戻る。

当時遠距離交際していた相手に会うために新幹線に乗る予定だった。

だから彼に、のぞみのチケットを見せ、時間を伝えた。

「まだ時間がある。ここを15分に出れば充分間に合うよ。」

と彼は言う。

だけど、私は忙しく移動するのは好きじゃない。

ゆったりカフェにでも入ってから新幹線に乗りたいので、早めにタクシーを呼んだ。

「もう行くわ」

いつになく、寂し気な顔をしてじっと見送る彼の姿が、タクシーのミラー越しに見えていた。

 

翌朝、交際していた相手の家で、彼からのメールを受信した。

逢いたいでもなく、寂しいというわけでもない。

全く関係のない話。

でも珍しく長文。

一日ゆっくりするはずだった。

でも……

無視できなかった。

 

当時交際していた相手は親にも友人にも私のことを隠していた。

不倫でも何でもない。

相手の親の商売のイベントも手伝い完売させていたし、私にはまったく非が無かったと思う。

あるとすれば、ただ22歳上というだけだ。

まるで私がモンスターか何かみたい……

いつも私はそう思っていた。

 

だから正直に伝えた。

「あの子からメールが来てる。今から帰るわ」

そして彼には

「今から帰るから、京都駅で待ってて」

と返信した。

 

改札を出ると、彼が待っていた。

いつもと変わらない、満面の笑み。

周囲の目など全く気にもしない。

2人ともが好きな、抹茶のカフェに入った。

 

カフェは満席。

隣のテーブルとの距離も詰まっていて、ぎっしり並んでいた。

隣のおばさんが、何度も私の顔を見て彼の顔を見る。

何度も何度も。

いや、言いたいことは分かるよ(笑)

親子に間違われたことも一度もなかったし。

 

私も彼も同じものを頼んだ。

なのに、話しながら彼はわざわざ私のグラスを取ってストローで飲む。

そしてまた戻す。

「???」

「俺、浮気はいいと思うんだ」

「私は浮気は無理。付き合っている人を保険みたいに扱うこともできないし、貴方を保険みたいに扱うこともできない。どちらも大事だからなおさらできない。」

「今日……彼女に別れ話をしようと思ってる。これから会う約束してるから話してみる。」

彼の話はまるで他人事のようでいて、それが私に言いたい事なのだと、本当は知っていた。

今この時が転機なのかもしれない。

でもなぜかどうしても、それに乗る気分にはなれずにいた。

「きちんと自分の想い伝えたほうがいいよ。そうしたら改善できるかもしれないじゃない。」

 

まさか、彼との縁が13年経った今も切れないなんて、その頃は想像もできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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